ART AWARD TOKYO 2007 グランプリ
荒神明香 インタビュー

ART AWARD TOKYO 2007のグランプリ受賞作『Walk in マ・マー』についてお聞かせ下さい。何故スパゲッティを使って作品を作ろうと思ったのですか?

私はスパゲッティーが好きで、母からよく送られてくるのですが、その素材を改めてよく見てみると、ひそかに黒い粒粒が入っていたり、なんとも言えない透明感をもっていて、黄色くて、「不思議な素材だな。この麺の中には未知の構造があるみたい・・・」と思ったのがきっかけでした。食べ物で遊ぶとよく母にしかられたけど、今こういう活動の中で、そういうことをおもいっきりできるっていう楽しみもあります。食べ物も身のまわりのものも、そんな素材として改めて見ると、いろいろな使い方がでてきてとっても面白いです。

実際参加してみて、AATはどうでしたか?

一番良かったのは自分の作品に対して色々な人の意見やアドバイスが聞けた事です。また、自分の作品を前にしてそれについて説明しているうちに、自分ではそれまで意識していなかった制作の意図をあらためて認識する事ができました。

学校での講評とは違いましたか?

もう少し開かれた感じがしました。それとAATは公共の通路を使って展示するので、一般の人に作品をみてもらう機会が持てた事もよかったです。どういう風に自分の作品がみてもらえているのか気になって、何度か会場に足を運びました。私の作品の前で子供が何か考えながら立ち止まっていたり、親子連れが作品について話している姿を見つけたりしました。特にアートに関心がある訳ではない人たちが、ああいう作品に触れているのを間近に見られたのはすごく面白い体験でした。

AATのグランプリ受賞で何か変わりましたか?

少しだけ自信がつきました。それと、この展示をきっかけに声を掛けて頂く機会は増えました。ミヅマアートギャラリーの三潴さんにも作品をみて頂いて展示の機会を頂きましたし、東京都現代美術館での企画への参加とか、今年の年初めには台湾のギャラリーでも展示をさせてもらったんです。4月からはブラジルでの展示も始まります。

東京都現代美術館での企画への参加はどのような経験でしたか?

最初に話を頂いた時はびっくりしました。「自分でいいのかな」って。でも、展示場所を見せてもらったら考えが変わりました。出来る限りの事はやってみようって思えたんです。すごく面白い場所だったんですよ。新宿駅の丸ノ内線からJRに抜ける通路の中にあるショーウィンドーで、すごく人が多いんです。この企画の時も自分の作品がどうやって見られているのか気になって様子を見に行きました。そうしたら急いでいる人が多いなかで、作品の前で足を止めてぼーっとみてくれる人もいて、すごく嬉しかったです。ここで展示したのは、花が水面に映った状態で止まっているっていう瞬間を表した静かな作品だから、そういう険しい所にこの作品が『ぽっ』とあって、それを忙しい人たちがそこに立ち止まって見るっていう状況が面白かったです。わざわざ美術館やギャラリー等に来ないような人たちにもみてもらえたっていう点ではAATとこの企画は共通していました。

最近はどのような作品をつくっていますか?

以前から何も無い空間に対してアプローチする感覚があったのですが、最近は『形にならないけどそこにあるもの』が気になっています。自分で光が作れたらすごいなって思って、去年の暮れに、RGBみたいな作品をつくりました。トレーシングペーパーを5mm幅に切ったものを赤と青と緑の顔料で染めて、それぞれで無数の輪を作って横5m立て3mのカーテンのようにして展示しました。自然光の入る場所だったので、日差しの変化で1つ1つの輪が見えたり見えなかったり、さらに自分が動く事で手前と奥の区別がつかなくなったりして、ほとんど空中に浮かぶ霧に近い状態に近くなっていきました。トレーシングペーパーのような身近な素材を使った、自分が出来る範囲内での小さい行為の集積によって、何か現象が作れたらと思っています。

最後に、今年のAATに出る学生達に一言頂けますか?

AATって一人一人に与えられる展示空間がすごく狭いんですけど、そこからはみ出すくらいの勢いで、もう楽しんでやってほしいですね。私は大学の同期が何人か一緒に展示していた事もあって、彼らと「一緒に展示出来る最後の機会なんだから楽しもう!」と盛り上がって参加したのを覚えています。せっかくの機会なので、皆さんも是非楽しんで展示をして下さい。

2008年2月7日 インタビュアー:山下千智